誰も見ていない時間

ゲーム、読書、マンガ、ライフハックなどの雑記

利休にたずねよ 構成にトリックのある歴史小説

スポンサーリンク

第140回直木賞受賞作品であり、2013年に市川海老蔵主演で映画化された作品なので、ご存知の方も多いと思います。

 

千利休を主人公に、利休を取り巻く人物を描いた作品です。豊臣秀吉や石田三成、黒田官兵衛、細川忠興のような歴史上の武将はもちろん、利休の妻である宗恩(そうおん)や先妻のたえ、そして鍵となる女性である高麗の姫など様々な人物が登場します。

f:id:kitahana_tarosuke:20171218180542j:plain

(出典 amazon)

歴史小説好きの私が今までこの小説を読んでなかったのは、千利休に興味がなかったから、です。

・・・身も蓋もない書き方ですが、歴史小説好きの人って戦国武将には興味があっても、茶人にはそれほど惹かれないんじゃないかなー。少なくとも私はそうです。

 

でも読み始めてみると続きが気になって、最後まで一気に読んでしまいました。

構成にトリックのある歴史小説

構成にトリックがある、とまでいうと言い過ぎかもしれません。

古い小説なので、種明かしをしても大丈夫でしょう。ネタバレが気になる方はこの先は読まずにブラウザを閉じていただければと思います。

 

この小説は時系列が逆になっています。

 

千利休が切腹する当日から物語が始まり、時間が少しずつ遡っていきます。

 

切腹当日

切腹前日

切腹の15日前

 

というような感じで、時間が遡っていきます。遡ったそのときどきで登場人物との物語が一つの章になっています。

 

最も時間が遡るのは、千利休がまだ与四郎と呼ばれていた19歳のときです。

物語の要所要所で登場する緑釉(りょくゆう)の香合の秘密が、この最後のくだりで明らかになります。

 

千利休はなぜ切腹したのか

小説の中ではそれほど重要事項ではないのですが、千利休が切腹した理由が気になります。調べてみたら千利休が切腹した原因は今でもはっきりとしていないようです。

 

「利休にたずねよ」では、千利休が切腹に至った理由は二つ記載されています。

  • 大徳寺山門の利休の像が不敬であること
  • 茶道具を法外な高値で売っていること

でも、秀吉の懐刀とまでいわれた利休が、これくらいの理由で切腹になるでしょうか。

 

千利休の首は切腹後に一条戻橋で梟首までされています。勘気に触れたというよりも逆鱗に触れたといっていいくらいの扱いですが、その原因はいったい何だったのでしょうね。

  • 二条天皇陵の石を勝手に持ち出し手水鉢や庭石などに使ったことが秀吉の怒りを買ったという説。
  • 秀吉と茶道に対する考え方で対立したという説。
  • 秀吉は元々わび茶が嫌いで、ある日彼の命令で黄金の茶室で「大名茶」とよばれる茶を点てた頃から利休は密かに不満を募らせていた。さらにこの後、利休が信楽焼の茶碗を作っている事を聞いて憤慨した秀吉はその茶碗を処分するよう利休に命じたが、利休が全く聞く耳を持たなかったために秀吉の逆鱗に触れたという説。
  • 秀吉が利休の娘を妾にと望んだが、「娘のおかげで出世していると思われたくない」と拒否し、秀吉にその事を恨まれたという説。
  • 豊臣秀長死後の豊臣政権内の不安定さから来る政治闘争に巻き込まれたという説。
  • 秀吉の朝鮮出兵を批判したという説。
  • 権力者である秀吉と芸術家である利休の自負心の対決の結果という説。
  • 交易を独占しようとした秀吉に対し、堺の権益を守ろうとしたために疎まれたという説。
  • 利休が修行していた南宗寺は徳川家康と繋がりがあり、家康の間者として茶湯の中に毒を入れて、茶室で秀吉を暗殺しようとしたという説。
  • 茶会で秀吉に茶をこぼしたという説。

(出典 Wikipedia)

Wikipediaに記載されているだけでも、かなりの数の仮説が記載されています。

 

以下は私の憶測です。

茶室は政治に関する密談にもよく使われたそうです。

茶頭として密談に立ち会うことも多かった利休が、秀吉の聞いては行けない密談を聞いてしまった・・・では、おかしいかな。茶頭として最初から利休がいるのに、鋭敏な秀吉がそんな話をするはずもないので。

 

何らかの重要な政治向きの話に、利休が反対したのかもしれません。

・・・うーん。これも弱いかな。まあ、憶測話はキリがないのでこれくらいで止めておきましょう。 

スポンサーリンク

 

 

まとめ ー 千利休を主人公に構成に捻りのある歴史小説

歴史小説というと三英傑や戦国大名を主役にしたものが大半です。

私自身も司馬遼太郎の関ヶ原や国盗り物語で歴史小説にハマり、その後に山岡荘八や吉川英治、池波正太郎、隆慶一郎といった感じで読み広げてきました。どの作家の作品も主人公は大半が戦国武将でした。

(池波正太郎氏は時代小説も多く書かれているので、そうでない主人公も多いのですが)

 

「利休にたずねよ」の山本兼一氏は他に岡部又右衛門など、武将以外の人物を主人公にした小説も多数書いておられるようです。また折を見て読んでみることにします。