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ゲーム制作者はゲームを作っているときにクソゲーだと気づかないのか?

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数日前にスマホで気になるニュースを目にしました。ゲーム制作者はゲームを作っているときにクソゲーだと気づかないのか?、というトピックでした。

 

結論を先に書くと、気づくかどうかは立場によります。 ゲーム開発でどういう人がゲームのおもしろさに関係してくるのかも含めて解説してみます。

 

ちなみに私は大手ゲームメーカーと中小のデベロッパーの両方を経験しています。だからといって全てのケースについて正しい、というわけではもちろんありません。あくまでも自分が経験してきたことをベースにお話しします。

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ゲーム開発に携わる人々

まず、ゲーム開発に携わる人々=ゲームのおもしろさをコントロールする人ではありません。昔と違ってゲーム開発の規模も肥大化しており、コンシューマーだと百数十人が制作に参加しています。

 

たとえば会社で分けても、

  • メーカー
  • デベロッパー(元請け)
  • デベロッパー(孫請け)
  • 海外の制作会社

くらいは当たり前で、さらにデベロッパー(元請け)が海外の制作会社に依頼して、そのクオリティが低かったので、国内のデベロッパー(孫請け)で作り直してもらって、メーカーに納品する、ということもあります。

 

といっても、これらはゲームの中に登場するキャラクターモデルとか背景モデルのケースであって、ゲームのおもしろさとは直接関係はありません。

 

早い話がゲームを作っているといっても、これらはグラフィックやプログラム、サウンドなどのゲーム構成する要素を作っている人たちなので、ゲームのおもしろさの根幹部分に関与することは難しいのです。

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ゲームのおもしろさをコントロールしているのは誰か?

ではゲームのおもしろさをコントロールしているのは誰でしょうか。職種でいうとディレクターです。プロデューサーではありません。この二つの職種について簡単に説明します。

 

プロデューサー

プロジェクトのマネジメントをする人。予算と期間と人を配置して、ゲーム開発というプロジェクトを完遂させる立場の人。

 

ディレクター

現場でゲーム開発の指揮をする人。プロデューサーが用意した予算と期間と人を使って、ゲームのクオリティをコントロールする立場の人。

 

じゃあ、クソゲーが生まれる原因はディレクターにあるのか、というと一概にはいえません。それは会社としてゲームを作っている以上、様々な要因が絡んでくるのです。

もうひとつ職種を紹介します。

 

営業

ゲーム会社にも営業は存在します。

開発会社の営業先はメーカーです。当たり前ですね。メーカーから仕事を受けている以上、営業先はメーカーになります。

 

ではメーカーの営業先はどこでしょうか。町の小売店、ではなく、TVゲームを扱っている卸問屋がメインになります。

コンシューマーゲームの場合、流通経路は三つあります。

  • 卸問屋を経由
  • 大手販売店を経由
  • メーカーからの直販

そして上の三つの中では、卸問屋への出荷が大半を占めています。今は昔と違ってAmazonなどの台頭もあり、卸問屋経由は減っていると思いますが、それでも大部分は問屋さんを経由しているのは間違いありません。

 

プロデューサーとディレクターがタッグを組んでも・・・

一般的にクソゲーが生まれることが多いケースは、

  • 低予算
  • 低期間

のどちらかです。企画がおもしろくない、などは誰でも気づきます。ゲーム開発者の大半はゲームのヘビーユーザーです。もちろん個々におもしろさに関する感性は異なりますが、箸にも棒にもかからないようなゲーム制作はしません。

 

会社にも販売計画があります。資金繰りもあります。そしてそれにそって営業や会社の上層部は動いています。ゲーム会社も営利企業である以上、このタイミングで売上を上げないと困る、というタイミングがあるのです。

 

プロデューサーはプロジェクトの「ヒト・モノ・カネ」を管理するのが仕事です。ディレクターから、ゲームのクオリティを上げるためにもっと予算と期間が欲しい、という要望があっても、営業や会社が卸問屋と販売スケジュールをがっちりと決めてしまっている場合、対応できないことがあるのです。

 

体力のあるメーカーなら発売延期をして、クオリティを上げることもできるでしょう。ただし前述したような理由で、メーカーであっても販売スケジュールをずらせないこともあります。

 

さらにデベロッパーのプロデューサーの場合は、メーカーに対して何度も開発期間の延長を交渉していると、次は仕事を発注してくれなくなる可能性が出てきます。

 

受託開発の場合は、プロデューサーは限られた予算と期間で必ずゲームを完成させないといけないのです。

 

クソゲーが生まれやすいジャンル

さらにクソゲーが生まれやすいジャンルというのもあります。それは版権を使ったゲームです。キャラゲーといってもいいかもしれません。

 

あるアニメを題材にしたゲーム開発のプロジェクトがあったとしましょう。

前述したように会社は予算と期間と人を用意します。通常通りゲーム開発は進むのですが、チェック機関が一つ加わります。キャラゲーの版元です。

 

版元というのはアニメの場合は○○制作委員会の場合もありますし、出版社のケースもあります。アニメの原作がマンガの場合、マンガ家のチェックが入ることもあります。

 

あー、このキャラにこのセリフは合わないので止めてください

 

 
 

原作のイメージと合わないので、削除の方向で

 

 
 

キャラクターの顔のタッチが異なるので、描き直してもらえますか

 

 

 

版元と交渉するのはプロデューサーの仕事です。腕のいいプロデューサーであれば、版元と上手く交渉してプロジェクトが円滑に進むこともあります。ただどんなに腕のいいプロデューサーであっても、異常なくらい版元確認が厳しい版権もあります。

 

ディレクターやプランナーが作成したゲームデザインを調整する必要が発生したり、デザイナーがグラフィックを描き直したりしていると、限られた時間と予算がどんどん削られていくことがあるのです。

 

キャラゲーは版元確認という一手間が加わることによって、クソゲーが生まれやすい土壌といえるでしょう。

 

まとめ ー クソゲーを作りたくて作っている開発者はいない

最後にクソゲーという言葉について書いておきます。

クソ映画とかクソ漫画とはあまりいいません。クソWebとかクソミュージックともいいません。なのになぜゲームだけクソゲーというのでしょうね。

 

私自身はこの言葉が嫌いです。

それでも今回は一般化しているので使用しました。

 

ゲーム開発に携わっている開発者で、クソゲーを作りたくてゲームを作っている開発者は存在しません。

 

当たり前ですよね。どの業界でもそうだと思います。今回はクソ映画を作ろうぜ、という映画製作者は存在しないでしょう。

 

ゲーム開発者も給料をもらう社会人です。露骨ないい方をすれば、いいゲームを作って会社が儲からないと給料も上がらないのです。ユーザーに楽しんでもらえるような、いいゲームを作りたいという気持ちももちろんありますが、それ以上に自分のためにゲームを作っているのです。

 

少し話を変えます。

レストランの料理人が美味しい料理を作るのはなぜでしょうか?

お客さんのため、というと聞こえはいいですが、それよりも当たり前のこととして、良い料理を作ってお客さんにお金を払ってもらって、自分が生活していくためですよね。美味しい料理を提供できなければ、お客さんが来ず、レストランはいずれ閉店してしまうでしょう。

 

ゲーム開発も同じです。良いゲームを作らないと自分が食べていけないのです。

 

ゲームにしろ、映画にしろ、料理にしろ、ものづくりをしている人間はみんないいものを作りたいと願い行動しています。営業の人が悪い訳ではありません。ゲームが売れるのも、開発の仕事があるのも営業のおかげです。版元の人も自分の仕事に責任をもってやっておられるのでしょう。

 

ただ、それらが悪いタイミングで重なってしまったときに、クソゲーが生まれてしまうことがあるのです。