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20年間歴史小説を読んでいる男がお薦めする歴史小説ランキング10(戦国時代編)

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歴史小説を読み始めてかれこれ20年以上になります。

最初に司馬遼太郎にハマり、それから山岡荘八、池波正太郎、吉川英治といった大御所を始め、様々な作品を読み漁りました。

 

今回は過去に読んだ作品の中から、自分のお気に入りの作品をランキング形式でまとめました。

 

ちなみに歴史小説と時代小説の違いを大雑把に分けると、

  • 実在の武将が主役で舞台は戦場
  • 架空の人物が主役で舞台は市井

という感じでしょうか。今回は戦国時代をテーマにした歴史小説のランキングになります。

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選択するにあたって一つだけルールを設定

ランキングを作成するにあたって、一つだけルール設定してみました。

 一作家に一作品

作品のおもしろさだけでランキングを作成すると、同じ作家の作品がずらりと並んじゃうので、一人の作家につき一作品だけにしてみました。

 

上下編になっているものや、巻数が多いものでも一作品として扱っています。タイトルが違うもの(富樫倫太郎の軍配者シリーズや、鈴木輝一郎の四人シリーズなど)は、それぞれで一つの作品としてカウントしています。

 

1位 関ヶ原 司馬遼太郎

司馬遼太郎氏の作品で一番好きなのが関ヶ原です。石田三成とその家臣である島左近を軸に、関ヶ原の戦いへと至る物語を描いた作品です。

 

私が初めて読んだのは高校生くらいのときで、それから7-8回くらいは読み直していると思います。

 

この小説の石田三成は異常なまでの正義感を持った武将として描かれています。豊臣恩顧の武将たちが自家の存続を考えて東軍に寝返る中で、ただ一人豊臣政権を維持すべく奮闘します。

 

秀吉の死後、豊臣家のルールを次々に無視し始める家康を誰も注意することができませんでした。それを正面から弾劾したのが石田三成です。そして近江佐和山19万国の身上でありながら、関八州250万余国の家康相手に、あと一歩のところまで持ち込んだのですから、快男児といっていいでしょう。

 

2位 影武者徳川家康 隆慶一郎

徳川家康の影武者説は古くからあります。この作品は徳川家康が関ヶ原で戦死し、家康の影武者を務めていた世良田二郎三郎元信と人物が家康に成り代わって、徳川家を維持しようとします。

 

この小説で敵役として描かれているのは、家康の息子の徳川秀忠です。世良田二郎三郎元信は本多正信や本多忠勝などと協力して、駿河政権を作り上げて江戸政権の秀忠に対抗します。

 

おもしろいのが石田三成の家臣である島左近が関ヶ原で死なずに生き残って、世良田二郎三郎元信に協力することでしょうか。司馬遼太郎の「関ヶ原」では島左近は何度も徳川家康を暗殺しようとする役回りなのですが、この当たりのIfも歴史小説のおもしろさの一つですね。

 

隆慶一郎氏の歴史小説に度々登場する「道々の輩(ともがら)」の描写も印象的です。

 

3位 のぼうの城 和田竜

秀吉による小田原征伐の戦いの一つである忍城の戦いを扱った作品です。

 

この作品はとにかく主人公である成田長親のキャラクターが強烈です。のぼうの城というタイトルの「のぼう」は「でくのぼう」の「のぼう」です。家臣や領民にもそんな呼び方をされるほどのダメな城主(正確には城主の弟)が成田長親です。

 

押し寄せる豊臣軍は石田三成を大将とする2万の軍勢で、守る忍城の人数は500人です。誰もが開城降伏説を唱える中、ただ一人徹底抗戦を主張する成田長親に引きずられる形で、成田家は開戦に踏み切ります。

 

家臣団の奮闘や領民の協力、そして成田長親の才覚?もあり、忍城は落城すること無く終戦を迎えます。それは北条氏の本城である小田原城が落城したあとのことでした。

 

歴史上の成田長親は中々の器量人だったようですが、小説の成田長親は不思議な魅力を持ったヒーローといいっていいでしょう。

 

 

4位 真田太平記 池波正太郎

真田氏というと関ヶ原の戦いのときに徳川秀忠を翻弄し、本戦に間に合わなくさせた真田昌幸や、大坂の陣で徳川家康をあと一歩のところまで追い詰めた真田幸村が有名です。でもこの小説を読むと、真田昌幸の長男であり、幸村の兄である真田信幸(のちに信之)が如何に優秀だったのかが分かります。真田太平記の本当の主人公はこの人、といってもいいんじゃないかな。

 

他に真田家に仕えた矢沢頼綱など、実力はあったがあまり有名ではない武将も描かれていたり、真田ファンにはたまらない小説です(矢沢頼綱は真田幸隆の弟で、真田昌幸の叔父)。

 

真田十勇士が活躍する小説も数多くあるのですが、その中ではやはり真田太平記を一番に押したいです。霧隠才蔵や猿飛佐助、根津甚八などに相当する人物が登場しますが、名前がそのままではなく、小説独自の名前にアレンジされています。

 

 

5位 織田信長 山岡荘八

山岡荘八氏の小説は人物描写が豊かで、セリフも人間味を帯びたものが多いと思います。徳川家康とどちらをあげようか迷いましたが、本人のキャラクターが強烈な織田信長を。

 

織田信長の守役で諫死した平手政秀という武将が居るのですが、小説の中の信長は、平手政秀の死を知ると、城外に飛び出していって川の水を蹴り上げて、爺!、飲め!、と錯乱気味に叫びます。 

 

信長からすれば、平手政秀を好ましく思いつつも、結局は自分を理解してくれていないという悲哀があったのでしょう。たわけ者といわれつつも、守役の平手政秀への愛情が分かるシーンです。

 

6位 清州会議 三谷幸喜

古畑任三郎などの脚本で有名な三谷幸喜氏の歴史小説です。表紙からしておかしいですね。武将がスマートフォンを持っていたり、傍らに新聞紙が置いてあったりします。

 

歴史小説でも三谷幸喜氏のウイットな演出は健在です。狩りをするシーンで、日和見役の池田恒興が足を痛めた振りをするシーンや、キーマンの一人である織田信長の弟である織田信包の洒脱的なセリフなど、読んでいてニヤリとしてしまいます。

 

7位 金ヶ崎の四人 鈴木輝一郎

登場する4人の性格の描写がおもしろいのが、鈴木輝一郎氏の「四人シリーズ」です。中でも私が好きな作品が、織田信長の金ヶ崎の退き口を扱った金ヶ崎の四人です。

  • 織田信長 神出鬼没。突拍子もないことを言い出し、突拍子もない行動をする
  • 羽柴秀吉 戦に弱いが、銭金の調達に優れている。お調子者。よく漏らす。
  • 徳川家康 常識人だけにいつも損をする役回り。武芸の達人。
  • 明智光秀 常識人のようでいい加減なところも。博打好きで鉄砲の熟練者。

四人シリーズでは共通して、三英傑+明智光秀が登場するのですが、性格は上記のように設定されています。キャラクターが立っている歴史小説といっていいでしょう。

 

金ヶ崎の四人では、いつもの四人に加えて適役として浅井長政が登場するのですが、この浅井長政が怖さを感じるくらい、強者として描かれています。劇中で浅井長政がどこを攻めてくるのかが焦点のひとつで、読んでいてハラハラします。

 

絶妙なタイミングで突如登場する信長と、いくさには弱いが踏ん張るところは踏ん張る秀吉、常識人のようでいて狂気を内包した初老の光秀、そしてそれに振り回される家康の掛け合いは、漫才とまでいうと言い過ぎですが、コミカルなおもしろさがあります。

 

8位 光秀の定理 垣根涼介

モンティ・ホール問題を上手く歴史小説に織り込んだのが光秀の定理です。

 

モンティ・ホール問題については書評を書いたときに、詳しく解説したので一読していただけると嬉しく思います。

 

 

オリジナルキャラクターとして兵法者の新九郎と僧侶の愚息という人物が登場するのですが、この愚息という人物が印象的です。町角で博打をするようないわゆる破戒僧なのですが、話す言葉に説得力があり、不思議な魅力があります。

 

この愚息という人物がモンティ・ホール問題利用した辻博打で生計を立てているのですが、織田信長の前でその博打を疲労するシーンは秀逸ですね。それを理解する信長と理解できない光秀の描写も見事です。

 

ちなみに私はモンティ・ホール問題は、最初はまったく理解できませんでしたw

 

9位 覇王の番人 真保裕一

ホワイトアウトや奪取で有名な真保裕一氏の歴史小説です。私が好きな武将である明智光秀が主人公です。

 

 

歴史小説は歴史を扱っている以上、結末は変わりません。明智光秀は必ず謀反をおこし、本能寺にて織田信長を討ち取るのです。そこに至るまでの経緯や、動機などを織り交ぜた、小説としての物語が作者の腕の見せどころになります。

 

覇王の番人の主人公は明智光秀なのですが、もうひとりの主人公は小平太という忍者です。親兄弟を侍に殺され、侍を殺すために忍者になった小平太が、縁あって明智光秀に仕えることになります。

 

忍者である小平太の目を通すことで、明智光秀が本能寺の変に向かっていく理由が明らかになっていきます。そして本能寺の変の後に黒幕の存在が明らかになります。この小説が歴史ミステリーともいわれる所以ですね。

 

10位 信玄の軍配者 富樫倫太郎

富樫倫太郎氏による軍配者シリーズからは「信玄の軍配者」を。

 

この小説で何よりも印象的だったのは、足利学校の存在です。

 

もちろん実際の足利学校と、小説の中の足利学校は違うのですが、軍師を要請する学校があったという設定はおもしろいですね。北条氏に使える忍者の首領の風魔小太郎が足利学校の出身で、北条氏の軍師になっていたりと、少し突拍子もない設定もありますが、その辺りは小説として楽しめば良いのでしょうね。

 

 

番外 利休にたずねよ 山本兼一

ちょっと変わった構成になっており、おもしろい小説ではあるのですが、主人公が戦国武将ではなく茶人の千利休なので、番外にしました。

 

この小説を読むとどうしても気になるのが「なぜ豊臣秀吉は千利休に切腹を命じたのか?」です。秀吉の懐刀とまでいわれた知恵者の利休をなぜ殺したのか。

 

これも様々な説があり、いろんな人が意見を述べているのですが、結論は出ていません。戦国史の謎の一つとしてこれからも続いていくのかもしれませんね。

 

 

まとめ ー 一番は関ヶ原。初心者にはのぼうの城を。

一番のお薦めはやはり「関ヶ原」です。あまりにも有名な作品なので、もう読んでいる人も多いかもしれません。

 

何度読んでも尽きることのない魅力が関ヶ原にはあります。山内一豊と堀尾忠氏とのエピソードなども興味深いです。司馬遼太郎氏によって印象的な話に作り上げられていますが、堀尾家も関ヶ原後には12万石から24万石へ倍増されているので、山内一豊だけが評価された訳ではありません。でも、これはまあ、それほど深く突っ込むところではないかな。

 

戦国時代を扱った歴史小説を、まだ一度も読んだことのない人であれば、お薦めは「のぼうの城」です。

 

忍城攻防戦という小田原征伐の地方での争いなのですが、主人公の成田長親のキャラクター設定もあって、非常に読みやすく、かつおもしろい作品に仕上がっています。

 

個人的に好きなのが鈴木輝一郎氏の「四人シリーズ」ですね。

もうそれぞれが漫談しているかのような、キャラの立った四人の会話が実に楽しいです^^