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狼と兎のゲーム 「怪物」に追いかけられる小学五年生の逃避行。好き嫌いが分かれるかも。

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私の好きなミステリーのひとつが我孫子武丸氏の「殺戮にいたる病」です。「狼と兎のゲーム」はその我孫子武丸氏の作品です。DVを繰り返す親から逃げる小学生五年生の逃避行がメインなので、ミステリーというよりは、逃避行を舞台にしたサスペンスという感じでしょうか。

 

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おもしろい作品なのですが、好き嫌いは分かれるかもしれません。主人公は小学五年生の二人組なのですが、追いかける「狼」である山上茂雄がすごく凶悪に描かれています。殺人、暴力、暴行、虐待という行為を繰り返すので、読後感があまり良くないのです。暴力描写が苦手な人は注意が必要です。

 

心澄望と智樹の逃避行、追いかける狼

小学五年生の山上心澄望(こすも)は父親の茂雄から日常的に虐待を受けていた。心澄望には甲斐亜(がいあ)という弟がいるが、ある日、自宅で父親の茂雄が、甲斐亜の死体を庭に埋めようとしているところを目撃してしまう。

 

母親は茂雄の暴力に耐えかねたのか、2年前に失踪しており、孤独だった心澄望は、友人の藤沢智樹と一緒に茂雄から逃げだす。智樹と一緒に母親が居ると思われる場所を目指すが、そこにも茂雄が現れて・・

 

協力者をどんどん始末していく凶悪犯

題名にもある「狼」が茂雄で、「兎」が小学五年生の二人組である心澄望とその友人の智樹ですね。物語は三人称ですが、智樹の目線で語られるので、主人公はどちらかというと智樹でしょうか。

 

この狼役の茂雄が凶悪です。しかも劇中で警察官をしています。その立場を利用して悪逆の限りを尽くします。胸くそ悪い、というとあまり良い言葉ではないのですが、その言葉が当てはまるくらいの行動をするのが、茂雄というキャラクターです。

  • 子どもへの虐待
  • 妻への暴力
  • 助けようとする協力者への暴力

などなど、読んでいて不快になる行為が劇中で展開されます。特に二人を善意で助けようとする人物を顔の判別がつかなくなるくらいまで殴ったり、二人の担任である溌剌とした女性教師に暴行して心を折ってしまうなど、凶悪、という言葉では収まらないくらいの人物として描写されています。

 

でも読者を不快にさせるくらいの筆力のある作者、ということもできるので、その辺りはやはり実力作家というべきなのでしょうね。

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どんでん返しはあるけど・・・

逃避行を中心としたサスペンスなのですが、ミステリーっぽいどんでん返しはあります。ただそのどんでん返しも非常に後味が悪いので注意が必要です。

 

救いのない、とまではいわないのですが、ああ、そういうことなのか、とちょっと悲しくなる展開が最後にあります。いくら父親で狼役である茂雄が警察官でも、警察に届けることを心澄望が頑なに拒んでいた理由が最後に分かります。

 

まとめ ー おもしろいけど苦手な人は注意

おもしろいのですが、最初に書いたように暴力的な描写が苦手な人は要注意です。どんでん返しもあるにはあるのですが、それさえもあまり気持ちよくない展開だったりします。

 

子どもが居る女性の方は読むのを辞めたほうがいいかも、と考えてしまうくらいの作品です。