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殺し屋のマーケティング 受注数世界一の殺しの会社を作るには?

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殺し」が商品の会社のマーケティングを、小説仕立てで表現した本です。タイトルがまず印象的ですね。私が購入したのも「殺し屋のマーケティング」というちょっと変わったタイトルに惹かれたからでした。

 

ものを売るための仕組みづくりが、マーケティングの本質です。でも、その売る商品が「殺し」の場合はどうすれば良いのでしょうね。なにしろ扱っているのが殺人なので、宣伝や広告、営業は一切できません。

 

殺し屋のマーケティング

ものを売る、というのはビジネスの根幹です。

  • ブログから商品が売れない
  • フリマに出店しても客が来ない
  • メルカリに出しても買い手がつかない

どれも根本にあるのは「ものを売る」という行為ですね。

 

「殺し屋のマーケティング」は宣伝や営業が一切できない「殺し」が商品なのに、マーケティングの力を利用して、「殺し」の受注数を増やしていきます。

 

ものが売れない、と悩んでいる人にお勧めの一冊です。

 

主人公は女子大生起業家

女子大生の桐生七海(きりゅう ななみ)は、ある理由から「受注世界一の殺しの会社」を作ることを目指していた。宣伝も営業もできない「殺し」という商品を扱うために、七海はマーケティングの達人である西城潤(さいじょう うるお)に弟子入りする。

 

西城は七海に様々な気づきを与える。そして七海が思いついたのが、要人の警護を行う「レイニー・アンブレラ」という会社の設立だった。

 

表向きは要人警護の会社を運営し、裏では「殺し」の会社を経営する。リスクを管理するという点で共通している両社だったが、「レイニー・アンブレラ」が好調なのに対して、殺しの会社の受注は一向に伸びなかった。

 

七海が「女子大生起業家」として注目を集めるようになったこともあり、「レイニー・アンブレラ」は美人チェリストとして有名な山村詩織の警護を頼まれる。だが、そのリサイタルの舞台上で、山村詩織がライフルで射殺されてしまう。

 

警護を引き受けていた七海は、世間中からバッシングされ・・・

 

マーケティングのビジネス書というよりは

私がこの本を手にしたのは書店のビジネス書のコーナーでした。ただマーケティングのビジネス書と思って読むと期待を裏切られます。マーケティングを題材にした小説、と捉えたほうが良いでしょう。

 

ただ主人公の七海が目指しているのが「受注世界一の殺しの会社」を作ることなので、その設定がおもしろいですね。

 

何しろ扱っているのが「殺し」だけに、営業やPRが全くできません。

 

山村詩織の警護に失敗した七海は、マーケティングの達人である西城潤に相談します。すると潤は「今が最大のチャンス」と七尾に返答します。

 

この西城潤が教えるマーケティング手法が、この本が解説したい要点ということになるのでしょう。

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アップルよりもすごい小ざさの羊羹とは

西城潤は七海を吉祥寺へと連れ出します。それも朝の5時30分に。そしてある店に並びます。その店は朝の5時30分から行列ができる、一坪ほどの広さの和菓子店「小ざさ」でした。

 

小ざさについては私も名前だけは知っていました。でもその凄さの本質は理解していませんでした。

 

「殺し屋のマーケティング」からその凄さを引用します。

  • 貴金属を扱うティファニーは坪単価の売上が高い
  • IT企業のアップルがそのティファニーを抜いた
  • アップルがティファニーを抜いたことは世界中のニュースになった
  • 小ざさの坪売上はアップルの約19倍

 

日本の吉祥寺にあるわずか一坪しかない和菓子店が、アップルストアよりも売上が多いというのが興味深いです。しかもちょっと多いという訳ではなく、19倍なのですから、坪単位の売上だけで考えれば「アップルを凌駕している」といっても良いでしょう。 

 

小さな違和感。食べずに美味しいという人は居ない

ちょっと脇道にそれて、物語の本質ではないことについて記載します。どうでも良いことと言ってもいいかもしれません。ただ、どうしても気になったので・・・

 

物語中で、七海が小ざさの羊羹を口にします。そのときの描写が不自然です。

 

というのも、七海が羊羹を口に入れる前に「おいしい・・・」と言葉を発します。実際には口に入れていないのに、「幻の羊羹」というブランドの力で、口に入れたと錯覚して言葉を発したというシーンです。

 

でも、これは日常ではありえないですよね。どんなに美味しいものであっても、口に入れる前に「おいしい」という人は居ません。違和感がありありで、現実に引き戻されてしまった残念な描写でした。

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もし虫歯がなくなったなら。着眼点のおもしろさ

ネタバレになるので、ストーリーの詳細には触れずにおきます。ただ、読んでいると着眼点がおもしろいなと感じます。

 

たとえば劇中に「ククリコクリコクの粉」という架空の物質が登場します。塗布すれば虫歯が完治するという粉なのですが、この粉を巡ってストーリーが展開します。

 

塗るだけで虫歯が完治する、というと、それだけで理想的な薬という気がします。虫歯のない社会って良いですよね。歯医者での治療が好き、という人は世の中に存在しないでしょうから。

 

でも、考えないといけないのはマーケットです。歯科医療の市場です。コンビニよりも多いといわれる歯医者さんでの治療費だけではなく、歯科技師や医療メーカーの市場や、歯ブラシや歯磨き粉の売上、キシリトールガムなどの虫歯に関係した食費などもかんがえると、歯科医療の経済圏は5億円以上にもなるでしょう。

 

ククリコクリコクの粉、という虫歯がなくなる粉が実際に存在したとしたら、歯科医療の経済圏がなくなり、多くの人が露頭に迷うかもしれないのです。

 

まとめ ー ビジネス書ではなくビジネス小説として

ビジネス小説、という言葉があるのかどうかは分かりませんが、マーケティングのビジネス書として読むと期待を裏切られます。マーケティングを題材とした小説、と捉えるのが良いと思います。

 

そういう意味では非常に楽しく読むことができました。文中に登場する西城潤が用いるマーケティング手法は、巻末に7つのマーケティング・クリエーションとして解説も載っています。

 

私がおもしろいと思ったのは「小ざさ」のビジネスモデルと、ククリコクリコクの粉ですね。塗るだけで虫歯がなくなる薬が発明されれば、誰もが喜ぶと単純に考えていたのですが、巨大な経済圏の損失につながる、とまでは考えが及びませんでした。

 

それを知っただけでも読んだ甲斐がありました。

今度、東京に行ったら、小ざさに並んで羊羹を買ってみたいですね^^