夜行バスで女の子の毛布を盗んで感謝されて後悔した話
10年以上前に夜行バスを利用したことがあります。季節は冬で、とても寒い日でした。利用した区間が東京ー大阪だったのは覚えているのですが、上りだったのか下りだったのは覚えていません。それくらい昔の話です。
当時の夜行バスは男女兼用で(今もかな?)、カーテンなどもありませんでした。
夜行バスに乗り込んだ私は、自分の席に毛布がないことに気づきました。他の席をみるときちんと配備されています。備品の一覧にも毛布が記載されています。でも、私の席にはそれがありません。
そのときにちゃんとした人なら、乗務員に申し出て、予備の毛布を用意してもらうのでしょう。ただ、私はそうしませんでした。
前の席の毛布を失敬したのです。
あとから乗り込んできた可愛い女の子
夜行バスの客席は7割くらいは埋まっていました。そして私のすぐ前の席は空席でした。
前は空席なのかな。じゃあ、まあ、毛布を借りても問題はないだろう
心の中で勝手に「借りる」という言葉を使って、前の席の毛布を自分の席に移しました。
その当時の私は知らなかったのです。夜行バスが複数の場所から乗客を乗せて出発することを。
二番目の停車場所で乗客を乗せたときに、予行バスはほぼ満席になりました。そして私の前の席に座ったのは、20代前半の若い女の子でした。
女の子が毛布を探し始める。そして・・・
女の子は身の回りの荷物を整理しています。そのときの私はただひたすら後悔をしていました。
- 空席じゃなかったのか
- なぜ乗務員にいわなかったのだろう
- 女の子に怒られるのでは
頭の中をぐるぐると後悔の念が渦巻きます。でも、今さら自分から申し出て、毛布を返す勇気はありませんでした。
そのうち、女の子は何かを探し始めました。おそらく毛布でしょう。自分の席と周りの席を見比べて何かを探しているようです。後ろの席の私には女の子が何かを探している様子がよく見えました。
女の子は毛布をあきらめた。そのときに私は・・・
私にとっても一番楽な展開は、女の子が自分で毛布がないことを乗務員に申し出て、毛布を確保することでした。
でも、女の子は毛布がないことを乗務員に申し出る勇気がないらしく、自分の上着を身体にかけて、毛布を探す作業を止めてしまいました。
そうなると流石にそのままにしておくわけにもいきません。
少し離れたところで、何かの点検のような作業をしていた乗務員に、私は声をかけました。
前の席の人の毛布がないみたいなんですけど、予備はありますか?
もし、予備がなかったときはもちろん自分の毛布を女の子に渡すつもりでした。でも、乗務員はあっさりと予備の毛布を出してくれました。
そして、乗務員が立ち去ったあと、女の子はこちらを向いて、小声でこういいました。
「助かりました。ありがとうございました」
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まったく眠れない夜行バスの夜
その日の夜行バスの中で、私は一睡もできませんでした。ありがとう、といわれて、心の底から後悔しました。
夜行バスの中で、バカな男が毛布を盗んで感謝されて後悔した話でした。