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立ち食いそば屋でサラリーマンに絡んだ酔っぱらいの末路

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20年以上前の話です。立ち食いそば屋でアルバイトをしたことがあります。場所は大阪の天王寺でした。カウンターだけの小さい店で、お客さんは入っても7-8名くらいでした。

 

小さい立ち食いそば屋ということもあり、接客から調理までほぼ一通り担当しました。注文を聞いてからそばを茹で、ダシをかけて、具を載せてからお客さんに提供し、料金をいただくのが一通りの作業でした。

 

かけそば

客層は圧倒的にサラリーマンの人が多かったと思います。男性が9割以上を締め、女性客はほとんど来られませんでした。

 

0時まで営業していたこともあり、深夜の時間帯は飲みのあとの締めの一杯で来店される方も多くおられました。

 

 

酔っ払った客がサラリーマンに絡みだした

事件が起こったのは夜も遅い時間帯でした。店内には数人のお客さんがいたのですが、そのうち酔っぱらいのお客さんが隣のサラリーマンに絡み始めたのです。

 

酔っぱらい客は40代くらいの体格のガッチリした男性でした。服装は作業着だったので、ガテン系の仕事をされていたのかもしれません。

 

その隣にいたのがサラリーマン風の男性でした。スーツ着用でメガネをかけ、生真面目な商社のサラリーマンという感じでした。

 

最初は何ごともなく、二人ともソバを食べていたのですが、しばらくすると作業着の男性が、サラリーマンの男性の何が気に入らなかったのか、絡み始めたのです。

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言葉がだんだんエスカレート

カウンターしかない立ち食いそば屋なので、客の会話は丸聞こえです。ただ友人同士ならともかく、見知らぬ客同士で会話をすることはあまりありません。

 

二人は隣合ってソバを食べていたものの、明らかに知り合いではなく、作業着の男性が一方的にソラリーマンに話しかけていました。

 

兄ちゃん、ここのソバ美味いやろ?

 

 

最初は普通の会話でした。サラリーマンの男性は、返事をすることなく自分のソバを食べていました。それが作業着の男性には気に入らなかったのか、だんだんと会話の内容がトゲトゲしくなっていきました。

 

ネクタイなんぞ締めてええ身分やのー

 

 

作業着の男性のサラリーマンに絡む言葉は、少しずつエスカレートしていきます。

 

お前、耳ないのんか?返事も出来へんのかコラ!

 

 

最後は明らかに喧嘩口調になっていました。サラリーマンの男性は怯えているのか、まったく返事をせず、うつむき加減でずっとソバを食べ続けていました。

 

小心者の私はどうしたら良いのか分からず、ただひたすらオロオロしていました。

 

二人はついに外で決着を

その時は不幸なことに、店内にはアルバイトが二人だけでした。私と50代の主婦の方です。主婦の方は店での経験は私より数年も長かったのですが、喧嘩沙汰になったときに体力的に仲裁に入るのは無理なのはあきらかでした。しかも作業着の男性を恐れているのか、厨房内でずっと二人に背を向けて作業していました。

 

店長は理由は何だったか忘れてしまったのですが、このときは不在でした。

 

二人の会話はますますエスカレートしていき(といっても作業着の男性が一方的にサラリーマンに絡んでいたのですが)、ついには、

 

お前、表に出ろや! その腐った性根を叩き直したるわ!

 

 

という事態にまで発展していました。 サラリーマンの男性はずっと作業着の男性を無視していたのですが、このときだけはその言葉に反応し、無言で外に出ていきました。

 

二人が居なくなったあと、私はすぐに同僚の主婦の方に、

 

すぐに警察に連絡しましょう!

 

 

と行ったのですが、主婦の方からは意外な返事が返ってきました。

 

サラリーマンの正体は?

主婦の方は笑いながら答えてくれました。

「あの人は刑事さんだから放っておいて大丈夫よ」

 

一瞬、意味が分からなかったのですが、落ち着くと言葉の内容が把握できました。メガネをかけてスーツを着た、一見は普通のサラリーマンにしか見えないお客さんは、実は刑事だったそうです。

 

主婦の方がずっと二人に背中を向けていたのは、笑いをこらえるためだったそうです。刑事さん相手に絡んでいるので、おかしくておかしくて仕方がなかったといっていました。

 

「気になるなら外を見てきていいよ」

 

という言葉に後押しされて、表に出てみると、店内とはまったく逆の光景がありました。作業着の男性が腰が90度に曲がるかと思うくらいの姿勢で、サラリーマンの男性に謝罪していたのです。

 

自分の人生で初めて刑事を見た瞬間でもありました。

 

主婦の方の話によると、以前に店にトラブルがあったときに担当してくれた刑事さんで、ときどきソバを食べに来てくれるとのことでした。

 

人は見かけでは判断できないな、と思い知らされたエピソードです。